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「令和の怪談」ジャニーズと中居正広に行われた私刑はもはや他人事ではない(3)【宝泉薫】

一方、山下達郎がブレることはなかった。これは彼が根っからの「職人」だからである。
本人も言うように、職人は「ご恩」や「ご縁」を何より大事にするし、また、作品至上主義だ。若き日の彼の才能をいち早く認め、それを発揮する場を与えてくれたジャニーへの感謝は不変であり、そうやって自らが関わった作品はもとより、ジャニーとジャニーズアイドルによる作品全般が貶められるのも許しがたかったということだろう。
それゆえ、彼は「性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいこと」としつつ、
「作品に罪はありませんし、タレントさんたちも同様です。(略)このような私の姿勢を、忖度あるいは長いものに巻かれていると、そのように解釈されるのであればそれでもかまいません。きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう」」
と主張したわけだ。
筆者はそれまで山下のことをあまり好きではなかったが、この件で見直し『週刊女性』の連載コラムで取り上げた。締めの一文はこういうものだ。
「この件は忖度など関係なく、頑固で気難しい職人が不愉快な状況にキレただけの話なのである」
これはその後「山下達郎、ジャニーズ性加害言及で『CD捨てた』『2度と聴かない』批判のアンチに『私の音楽は不要でしょう』炎上騒動は“忖度”ではなく『音楽の職人』のマジギレ」(週刊女性PRIME)のタイトルで配信もされた。
ところが、その配信版を読んだであろう人から想定外の攻撃が来たのだ。その人は音楽ライター(?)で、山下擁護の急先鋒だった。筆者はこのコラムを中立的立場で書いたつもりだが、その人には山下およびジャニーズへの批判と映ったらしい。
その後、この人について検索してみたら「あの00年代からネット各所で大暴れしてた困ったちゃん」「山下達郎氏の件で乱心気味」といったつぶやきを見かけた。
なるほどと思いつつ、改めて痛感したのはこういうときに中立でいることの難しさだ。対立が激しくなればなるほど、白黒をつけたがる人が増え、どちら側なのかと迫られることに。グレーでいたくても、白からはそれが黒く見え、黒からは白く見えるという現象が起きる。基本的にジャニーズ擁護側である筆者としても、週刊誌連載では中立的立場で書くわけで、この人には「敵」だと見なされたのだろう。
当然、逆のケースもある。この人の山下&ジャニーズ擁護のつぶやきに「いいね」をしていた漫画家・ヤマザキマリが、アンチ側から批判されたのだ。
彼女はスマイルカンパニーの所属。ここはかつてジャニーズ事務所の役員でもあった小杉理宇造が山下とともに立ち上げた事務所だ。いわば身内の彼女にとっては自然な反応だろう。
しかし、この反応が「擁護の連鎖」などと叩かれてしまった。筆者にしてみれば「叩きの連鎖」にほかならないが、こうしたことがあちこちで勃発していたわけだ。
これが騒動を大きくして、鎮火もままならず、ジャニーズを窮地に追い込んでいった。そしてついに「法を超えた補償を行う」などと宣言してしまうのである。
これは悪手だったが、それくらいやむを得ない状況でもあったのだろう。芸能史におけるバッシングのなかでも、これほど大がかりで激しいものは前代未聞だったからだ。
文:宝泉薫(作家、芸能評論家)
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